会長挨拶

学会テーマ「今こそ、東北のちから!」

鈴木 由美

 このたび、二年越しの東北作業療法学会を開催する運びとなりました。それは、昨年開催予定だった第22回東北作業療法学会が、東日本大震災のために開催中止を余儀なくされたことに起因します。この事実を後世に残すために、今大会は第23回東北作業療法学会(本学会)として、山形県で開催することと致しました。したがって、東北地方の作業療法士が一同に会する機会は、秋田県での開催以来です。

 本学会の開催にあたっては、多数の関係各位からご支援とご協力ならびに激励のお言葉を頂きました。あらためてこの場を借りてお礼申し上げます。

 思い起こせば第1回東北作業療法学会は、平成2年に岩手県作業療法士会の主催で開催されました。それ以降、東北の作業療法士が一同に会し、研究成果の発表と意見交換、そして親睦を深める場として、各県が持ち回りで毎年秋に開催することが定着して参りました。学会開催にあたっては、各県の特性を最大限に尊重し、ゆるやかな東北連合をめざして運営して参りました。そこには、良い意味での東北のおおらかさを感じることができました。

 「東北の片田舎」という言葉があるように、日本における東北は、首都から外れ、経済的にも貧しく、生活関連の社会資本(インフラ)も十分に行き渡らないところがありました。幹線道路や空港の整備など、他の地域から比べて遅れをとってきたことも否めません。しかし、そこに暮らす私は、片田舎を日常的に受け止め日々暮してきました。東北で幼少期を過ごした多くの人が、就職や進学を機に故郷を離れ、都会へ出ていくこともごく当たり前のことと思っておりました。

 しかしながら、昨年3月11日の東日本大震災とそれに続いて起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故は、あらゆる意味で私の価値観を変えました。被災県が支えてきた産業や物流が機能しなくなり、日本に住む人々の暮らしに多大な影響を与えることとなりました。日本の繁栄を根底で支えていたのは、 片田舎である東北各地であることが東日本大震災をもって明るみになったのです。そして、東北を故郷にもつ人々の限りない郷土愛を知ることになりました。

 私たち実行委員は、本学会の準備を進める中で、東日本大震災を機に大きく学会の運営方針を転換しました。それは被災者支援の報告をできるだけ取り上げ、直接的な被災を免れた地域に暮らす人にも、災害支援に対する共通認識を持って頂くことを基本方針に据えた点です。被災者支援に携わった方々からのお話を伺うと、ご自身が被災されている方が少なからずおられました。その中で燃料や人手の不足など、ぎりぎりの状況でいかに対象者を守ってこられたか、学ぶことは多々あります。復興という言葉は重く、被災地に立てば、その言葉は容易でないことが実感できます。そして、この大震災を過去のものとしないように、次世代の人達にしっかりと伝えていくことが、私たちの使命と思っております。

 幸いにも、震災関連報告の募集には12題の応募がありました。また、広島県と大阪府から南相馬市へ支援されている方々の報告も頂きます。そして、次期学会の開催県である福島県からは16題もの演題が寄せられました。いずれの演題からも、真摯な姿勢で対象者に向かう作業療法士の姿が浮かび上がってきます。

 本学会は、来年に福島県で開催される第24回東北作業療法学会の礎になる所存です。来年には福島県に東北の作業療法士が結集し、東北の未来を語り明かそうではありませんか!本学会は、そのための話題を提供致します。どうか、ふるってご参加願います。「今こそ、東北のちから!」です。

2012年8月

第23回東北作業療法学会  学会長 鈴木 由美

前回までの学会長挨拶

 三月
 東北に春を告げるこの季節
 すべての生命に輝きをもたらすこの季節は
 あの日を境に
 鎮魂の時に変わった

 神の存在すら否定する
 裂けた大地
 沈む大地
 そして汚された大地

 なのに 人々はこの傷ついた大地を
 まるで子供を抱くように愛しむ

 早春の朝

 太古から受け継がれてきた
 生きるための作業が また始まる

 第23回東北作業療法学会に対して沢山のご支援とご協力をいただき、心から感謝申し上げます。

 4月を迎えたことで、私たち実行委員は、学会開催に向けての活動を一気に加速していきます。これまで公開してきましたブログ「学会長のつぶやき」および「実行委員長の叫び」は終了し、本学会の情報はこのホームページからの発信1本に絞り込みます。

 本学会企画のひとつとして取り組んで参りましたリレーメッセージについて、東北の会員の方から「賞品の提供は被災者の気持ちを無視している」というご指摘を受けました。私としましては、リレーメッセージを用いて学会を盛り上げ、東北への想いを全国で共有するための企画として立ち上げました。そのため賞品は「東北に深くなじみのある被災地の名産品」をとも考えておりました。しかしながら、このようなご指摘を鑑みると、被災された方の心情に思いが及ばなかったという事実に深く自省するばかりです。私の思慮を欠いた判断、およびその行為により、心傷ついた方々に心中からお詫び申し上げます。

 なお、お寄せいただいているリレーメッセージは、東北へ向けた想いが凝縮されています。実行委員会としては、メッセージを寄せてくださった方々への謝意として、ささやかではありますが、東北の名品をお贈りしたいと考えております。何卒、ご理解願います。

 第23回東北作業療法学会では、シンポジウム「東日本大震災へ対する作業療法士の活動」の報告を中心に据え、災害時さらには復興に向けた作業療法士の活動について重点的に考える機会に致します。これは、東北のみならず全国の作業療法士に課せられた重要なテーマです。

 私たち実行委員は、実りある学会にするために、本学会開催までの半年間、全力で取り組んで参ります。

 東北6県の会員のみならず、全国の方々と共感し、前進できるよう沢山の方々のご参加を心からお待ち致します。

2012年4月11日

 2011年3月11日に発生しました東日本大震災において、亡くなられた方々のご冥福と、被災された方々のお見舞いをこころから申し上げます。

 とりわけ、青森県、岩手県、宮城県、福島県におかれましては、いまだに被害の全容が明らかでない状況にあり、その傷跡はあまりにも深く、「復興」の厳しさは想像をはるかに越えたものがあります。

 そのような中、今秋に宮城県仙台市で開催予定であった、第22回東北作業療法学会は開催中止を余儀なくされました。これまで準備にあたってこられた、大黒一司学会長をはじめとする実行委員会の皆様のお気持ちはいかばかりかとお察し申し上げます。

 1995年1月17日に阪神・淡路大震災が起こった時、その被害の大きさに目を奪われながらも、今にして思えば、東北からは遠く離れているがためにどこか人ごとであったような気がします。しかし、今回の東日本大震災はその規模、被害の大きさ、そして予期しなかった震災後の物資不足から原発事故まで、直接的に私たちの生活そのものを脅かす事態となりました。この混乱の中、日本のみならず世界の注目を浴びたのは被災者の方々の統制された行動であり、愚直なまでに運命と対峙し被災者が被災者を助ける姿でした。私達はここに、これまで思いもしなかった東北人の魂の真髄を知ることとなりました。

 この震災の後、東北6県の作業療法士会は、様々な支援活動を展開しました。実際の被災地である青森・岩手・宮城・福島の各県士会は被災地への直接支援に出向き、大きな被害がなかった秋田・山形の両県は、避難者への支援や募金活動など間接的な支援となりました。それは、高齢者や子供達、そして障がい者の方々のみならず、すべての被災者の方々に対し、出来うることを最大限行っていく活動であると思われます。そして、これからの1年間は、5年後、10年後という視点で東北の復興を考えた時、その方向性を決めるための重要な1年となります。

 私たち作業療法士は、復興の表舞台に出て華やかに支援を行っていくような専門職ではありません。復興の谷間に取り残されそうな方々に手を差し伸べ、そっとその道を示して行くような地道な活動が主体です。そして、私たちのこれからの活動の積み重ねが、今後の日本における作業療法士の真価を決める重要な局面であるものと考えております。

 来年、2012年9月29日~30日には、山形市において第23回東北作業療法学会を開催します。これからの1年余の東北各県の被災者支援の取り組みを振り返りながら、東北の“福興”に作業療法士として何ができたのか、そして将来に向けて何をしていくべきかを、討議する場にしたいと思っております。そのために、いち早く、第23回東北作業療法学会のご案内をし、今後も継続的にその経過をお示しすることで、たくさんの皆様にご参加頂き、活発な議論の場にしていきたいと思っております。

 どうか、第23回東北作業療法学会を目指して、日々の活動に取り組んでください。そして、来年、山形の地で東北のちからを結集致しましょう!

2011年6月17日

一般社団法人山形県作業療法士会 会長挨拶

松木 信

 昨年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東日本大震災は、宮城県、福島県、岩手県を含む東北地方に未曽有の被害をもたらし、警察庁によると平成24年5月16日時点で死者15,858人、行方不明者3,021人、建物損壊1,194,860件となっています。被災に遭われた方々に対しお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復興を祈念いたします。

 さて、この度第23回東北作業療法学会を山形県で開催することになりました。昨年の東北作業療法学会は宮城県で開催予定でしたが、東日本大震災によりやむなく中止せざるをえませんでした。大黒一司学会長及び宮城県作業療法士会の皆さんのお気持ちを察すれば、残念でもあり、悔しいお気持ちではなかったかとお察しします。その宮城県作業療法士会の皆さんのお気持ちを引き継ぎ、鈴木由美学会長はじめ山形県作業療法士会の皆々は大いに奮闘中です。東北各県多くの作業療法士の皆さんに集まって頂き、とても良い学会であったと言っていただけるよう企画運営をしてまいりますのでよろしくお願い申し上げます。

 今回のテーマは「今こそ、東北のちから!」となっています。昨年の大震災により被災された各県作業療法士会の皆さんはいち早く支援活動に入り、作業療法士として作業を提供しながら様々な形で被災された方々に対して支援を行ってきました。第46回日本作業療法学会の中でも、「災害支援~その時、作業療法士は何ができるか!」というテーマで公開シンポジウムが開催される予定であり、そこで討論された一定の方向性をこの第23回東北作業療法学会で、さらに深めてほしいと提起されています。今回の学会では、震災関連の報告や発表も多数応募されており、討論が進むものと思われます。また、被災された各県作業療法士会からも報告を頂き「今こそ、東北のちから!-東北各県作業療法士会の取り組み-」というテーマでシンポジウムを予定しています。心の復興、生活の再建、地域の再生、新たな社会の再生に我々作業療法士は、誰とどのように連携し取り組まれたのか、作業の核となるものをみんなで討論したいと思います。東北作業療法学会が開催される秋には東北各県で稲刈りが始まります。真っ白な雪に閉ざされた寒い冬を乗り越え、雪解け水で花や緑が潤う春に田植えをし、暑い夏にどんどんと成長し、秋に見事に実った黄金の稲の収穫となります。我々が用いる作業は常に生活と関連し、そのことは生きがいへとつながるものと思います。多くの皆さんに山形県を訪れて頂き、東北の連帯で新たな作業療法の一歩を築いていきましょう。そして、この山形の東北作業療法学会を来年の福島県に引き継いでいきましょう!

2012年8月

一般社団法人山形県作業療法士会 会長 松木  信

一般社団法人日本作業療法士協会 会長挨拶

中村 春基

 昨年3月11日に発生いたしました、東日本大震災の爪あとはいまだに大きいものがあります。私は17年前に阪神淡路大震災を兵庫県明石市で被災いたしました。幸い、家具が倒れた程度で人災もなく平穏な生活をおくって参りましたが、火災にあった神戸市長田区を訪れますと、コミュニティーが崩壊し、多くの高齢者が被災前の話を懐かしく、涙ぐみながらお話しをされる場面に多く接しました。その時々、人は、人との関係性の中で生活していることを、つくづく思い知らされました。

 神戸は一見、昔の華やかさがもどり、町にも多くの外国の方が見受けられます。しかし、時間の経過と共に、多くの人災的側面が明らかになってきました。何故、防災計画を震度5で立てたのか。調査にあたった研究機関は震度6での防災計画を答申していたのにもかかわらず、当事の市長は、「経済」と「人の命」を天秤にかけ、経済的側面を優先したと思われました。このような事例は、福島原発の防波堤の高さに関する研究結果を、東京電力の経営陣は一蹴して採用しなかったのと共通しています。今の福島県の現状をみるとき、「判断」の大切さ示してくれます。

 さて、私は今「作業をおこなうことで人は健康になれる」という主張を、国をはじめ多くの関係団体に発信しています。これは、国庫補助金を活用して、4年間の研究事業の成果に基づくものですが、4年間に研究に携わって頂いた施設は延べ50施設以上、作業療法士は300名以上います。結果は、全国研修会、学会でのワークショップ、各士会代表者への研修会(2回)等で広報して参りましたように、利用者、他職種、作業療法士自身、生活行為向上マネジメントに基づく作業療法の成果を認めています。

 私は、この成果を多くの国民に届ける仕組みを作ることが日本の協会の使命だと思っています。この取り組みを基に、介護報酬改定の中の「生活機能向上に資する」というメッセージに生かされました。私の勝手な解釈ですが、「作業療法士よもっと、作業療法らしいことをしろ」という国のメッセージと思えてなりません。機能訓練、ADL、IADLに止まっていては、生活の一部しかみていないのは明らかです。生活行為全部をみることができる作業療法への変革が望まれています。しかもそれは、今後2年間で成果を出さなくてはなりません。

 私は「生活行為向上マネジメント」を次期5年間戦略の中核の一つとして位置づけたいと考えています。具体的には、理事会等でご審議いただき、9月までには基本方針を決めたいと思っていますが、東北各県士会におきましても、是非、これらの取り組みを推進していただき、作業療法の素晴しさを、国民に還元して頂きたいと思います。

 最後に、人の幸せは、人に愛され、ほめられ、頼りにされ、役割があることだと思います。作業はそれを、体験させる有効な手段であり、作業療法の本質はそこにあると思います。日々の皆様の臨床が、利用者さまの「幸せ」に貢献していることを念じて、お祝いの言葉とさせていただきます。

2012年8月

一般社団法人日本作業療法士協会 会長 中村 春基

コンテンツ

  • トップページ
  • 本学会について

  • 特別企画

  • プログラム
  • 演題登録

  • 参加・宿泊申込
  • 参加者の皆様へ
  • 各種協賛申込

  • 会場案内
  • リンク
  • お問い合わせ

東日本大震災について

3月11日に発生した東日本大震災により、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
1日でも早く復旧、復興されますことを、心よりお祈り申し上げます。

第22回東北作業療法学会開催中止のお知らせ